金属3Dプリンターとは?種類など基礎知識を解説

近年実用化の機運が高まってきている金属3Dプリンター。その名の通り、金属材料が使える3Dプリンターです。金属加工に馴染みがある方、樹脂3Dプリンターの経験のある方は、金属3Dプリンターに関する情報収集を始められていることと思います。ここでは、金属3Dプリンターでは何ができて、どのような場面で活用できるのか、検討にあたり気をつけないといけないことは何かを解説いたします。

金属3Dプリンターとは?

金属3Dプリンターとは、その名の通り金属材料が使える3Dプリンターです。使える材料はメーカーや方式によって様々ですが、ステンレス鋼や工具鋼、銅やチタン合金などが使える機種があります。従来工法の材料とは機械特性が異なるものの、樹脂とは違う金属材料ならではの強度や耐熱性の高い部品を3Dプリンターで造形することができます。

金属3Dプリンターのメリットを理解するには、樹脂材料での造形も含めた一般的な3Dプリンターでできることと、樹脂の3Dプリンターではできない、金属3Dプリンターならではの特徴を分けて考えることが重要です。

一般的な3Dプリンターのメリット

造形の内製化によるコスト、納期の短縮

外注していた試作や治具製造を内製化できるというのが3Dプリンターの大きなメリットです。機械加工設備を自前で持っていなかったり、稼働率が高く使いたい時に使えないという場合には外注となってしまい、コスト納期やかさんでしまいます。内製化することによりこれらを圧縮することができます。

従来工法を前提としない、自由な設計が可能

従来の加工方法を前提とした設計に慣れていらっしゃる方も多いと思いますが、3Dプリンターでの造形であれば、設計の自由度が高くなります。体積のある対象物の中身を空洞にして軽量化を実現する、複雑な形状を再現して、気流などを最適化する、などといったことが可能になるケースがあります。

樹脂3Dプリンターにはない、金属3Dプリンターならではのメリット

強度、耐熱性、熱伝導性など金属材料の機械特性が実現できる

当然ながら、樹脂材料では実現できなかった機械特性を実現できるのが金属3Dプリンターのメリットです。古い部品で型がなく3Dプリンターで造形したいが高い強度が必要、あるいは求める成果を最大化するためにソフトウェアで複雑な形状を設計したため3Dプリンターで造形したいが、高い耐熱性が必要、といった場合に、金属3Dプリンターが大きく貢献することになります。

試作からそのまま最終部品製造に使えるケースがあること

樹脂3Dプリンターで試作の効率化を行うものの、最終部品としてのスペックを満たすことができず、製造は金属加工で実施というケースは多いと思います。金属3Dプリンターであれば高い機械特性を持った造形物ができますので、求められる生産性によっては製造装置として使うことができます。ニアネットシェイプとして造形し、後加工で仕上げることで精度の高い部品を効率よく生産することもできます。

金属3Dプリンターの種類

金属3Dプリンターといえば、当初は粉末材料を使ったPBF方式が主流でした。平らに金属粉末を敷き詰めて、レーザービームや電子ビームで溶融・固着させながら積層していく方式です。しかし粉末材料の扱いが難しい、価格帯も1億円以上など高価なものが多く、なかなか導入に踏み切れないお客様が多い状況でした。

しかし2021年頃より本体価格が比較的低く、粉末材料の取扱いがない、導入のハードルが下がった、MEX等の金属3Dプリンターの導入も少しずつ進んできました。以下に金属3Dプリンターの主な種類を解説いたします。

MEXの金属3Dプリンター

MEXの金属3Dプリンター画像

樹脂の3Dプリンターではお馴染みのMEX(FDM)は、フィラメント状の材料をノズル部分で加熱して溶かし、先端から吐出して1層ずつ積層していく方式です。金属3Dプリンターの場合は樹脂と金属、ワックスを混練したものをフィラメント状や棒状にしたものが材料となります。積層での出力が終わった段階ではまだ造形が完了しておらず、そこから脱脂、焼結というプロセスを経て樹脂やワックスを除去し、造形物が完成します。

メリットとしましては比較的本体価格が抑えられていること、粉末の取り扱いがないため設置環境に関するハードルが低いこと、樹脂3DプリンターでMEXの機種をお使いのお客様でしたら馴染みがあること、などがあります。ただし前述のように出力後の後工程が必要なこと、造形時に必要な不活性ガスの供給、廃棄設備、高温の焼結炉に対応した耐火扉などの設置や天井高の確保など、気を付けないといけない点もあります。

バインダージェットの金属3Dプリンター

バインダージェットの金属3Dプリンター画像

敷き詰めた金属粉末の上に専用のバインダー剤を噴射し、1層ずつ固めて積層していく方式です。ヘッドの往復で広い範囲を一度に積層できるため、スピーディーな出力が可能です。その後、バインダー剤を除去し、金属の密度を高めるための脱脂、焼結というステップを経て造形物が完成します。

比較的高額になりますが、MEXとくらべて微細な形状の再現ができること、ネスティングにより1バッチで造形エリア内を広く使って、違う形状を含めて複数個の造形ができ生産性が高いこと、などが強みとなります。

DEDの金属3Dプリンター

DEDの金属3Dプリンター画像

ノズルから粉末状の金属材料を吹き付けると同時にレーザーや電子ビームを照射し、溶融、積層造形する方式です。脱脂、焼結、粉体除去、サポート材除去といった後工程がないのが特徴です。既存部品の上に付加積層造形することも可能なため、部品の補修用途などに利用することができます。

単純な形状で大型の造形に向いているとされる方式ですが、リコーではコンパクトなサイズ感のNikon社の製品を取り扱っています。ガスの供給、排出設備は必要ですが、設置に関する導入のハードルが比較的低い機種となります。

PBFの金属3Dプリンター

敷き詰めた金属粉末の上にレーザーや電子ビームを照射し、溶融して積層していく方式です。金属3Dプリンターの造形方式としては最も一般的とされており、様々な機種がリリースされていいます。

金属3Dプリンター検討時に気をつけなければいけないこと

前述のように価格面でも設置環境面でも導入のハードルが下がってきてはいますが、それでも樹脂3Dプリンターと同じような感覚で金属3Dプリンターを導入することはできません。留意すべきポイントを解説いたします。

従来工法の置き換えではメリットが出せないこと

一般的な金属加工で調達されている部品を金属3Dプリンターで作りたいというのは自然な発想かと思いますが、なかなかうまくいかないケースが多いです。金属3Dプリンターでは機種によりますが高い精度を実現することはできません。また方式によりますが生産性の問題で大量生産には向きません。またある程度の体積のものは中空構造と呼ばれる、中身を空洞にして造形をするため、強度についても高くありません。

金属3Dプリンターのメリットが出せるのは、小ロットだったり生産頻度の低い部品、あるいは一点ものの部品生産、型がない部品の生産、治具の内製化等となります。造形物に求める機械特性がマッチすることが前提となります。精度の問題についてはニアネットシェイプで出力して後加工で対応するなどの処理もできます。また従来工法では再現できない形状についても造形ができるため、強度や耐熱性を維持しながら軽量化を実現できるケースもございます。

また別のメリットとしては、切削加工が難しい難削材といわれる材料で造形できることがあげられます。従来工法で時間を要した加工条件の整備や高価な難削材専用工具が不要になります。留意点として、ニアネットシェイプという考えに当てはめると難削材の荒加工条件の整備などは不要になりますが、仕上げ加工技術は必要になります。

設置環境の整備が必要なこと

金属3Dプリンターの導入に際しては、機種や方式により様々な設置環境の整備が必要です。まずほとんどの機種で必要になるのが、造形時に金属の酸化を防止するための不活性ガスの供給、及びその排出設備です。供給についてはガスボンベでも結構ですが、排出についてはダクトで屋外に排出できるようにするなどの整備が必要です。
また金属粉末を取り扱う機種に関しては、防塵防爆の対策が必要だったり、焼結炉が必要な機種については耐火扉が必要だったりと、専用のスペースが必要となるイメージとなります。

工事やランニングコストを含めて、高額な投資となること

金属3Dプリンターの価格はどれぐらいになるのでしょう。付帯設備を含めた本体価格だけでも3,000万円以上からとなりますが、上記の設置環境の整備のために工事が必要になるケースがあります。また、材料やガスのコストと、保守費用を含めたランニングコストについても考慮する必要があるため、本体価格だけでは判断できません。

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